〜厳しく叱られる〜

　　私は子どものころ、あまり厳しく叱られると、怖くてどうして叱られているのか

　その理由を考えることもできませんでした。そして、ひたすら「ごめんなさい」を

　繰り返していました。私にとって「ごめんなさい」という言葉は「それさえ言えば

　怖い状況が終わる」という類のおまじないになっていたのです。

　　子どもに覚えさせようとして厳しい罰を与えるのは、ＡＤＨＤの場合はむしろ逆

　効果とさえ言えます。つい先日、息子に聞いてみました。

　「ママがすっごく怖く叱っちゃったときって、どんな感じだった？」

　「うーんとね、このあたりが（と、頭全体を手で覆って）ウワーンとなってわけわ

　かんなくなる」

　　これを聞いて私は少し驚きました。じつを言うと、恐怖の刺激（子どものころは

　親から厳しく叱られている際、大人になってからは夫ともめごとになりつらいこと

　を言われた際）があった場合に、私も頭部がジーンとしびれるような感じがするか

　らです。ちょうど孫悟空の頭についている輪がキューンと締まってきたような感じ。

　おそらく、脳内ではパニックが起きて、いろいろなことがストップしているのでし

　ょう。当然、叱られている原因を理解する以前の問題です。

　　厳しい罰がどれほど意味をなさないかを、それどころか悪い影響さえあることを、

　理解してもらえたでしょうか。

　　　　　　　　　○

　発達障害系の子に、厳しい叱責や罰を与えることは、逆効果であるということは、ほぼ定説に

なっていると言っていい。

　この記述は、実際に、厳しく叱責されているときに、脳内がどんな感じになっているのか、に

ついての記述になっていて、興味深い。

　子どもの厳しく叱られている時の脳の感じは、母親が厳しく責められる時の、脳の状態によく

似ている、と言う。これは、ありえることのように思われる。

　どっちにしろ、厳しく叱責される時、脳内ではパニックとなり、「ごめんなさい」は、呪文の

言葉となり、叱っている意味はなくなっている。残るのは、叱っている人の「自己満足」だけ

だ。

（この項、了）