<内側から見た自閉症>

〜東田直樹〜

『自閉症の僕が残してきた言葉たち』

〜自然という言葉〜

  僕を支えてくれたもうひとつのものは、自然でした。僕は、これまでずっと自然

 を自分の友達だと思って生きてきました。自然はどんな時も変わらずに僕を受け入

 れてくれたからです。話もできずにただそこで一生懸命生きている。そのことが、

 僕には自分の仲間を見ているようなのです。

  僕は、悲しいとき嬉しいとき、必ず山と空を見ます。言葉で話さなくても、自然

 は僕の心を優しく包んでくれます。この地球の上には、生きているだけで心が通じ

 合える仲間がいる。僕は自然から元気をもらえました。

  自然が僕に教えてくれたメッセージを、僕は大切にしていきたいのです。

       ○

 東田直樹くんの自然への感応力は素晴らしい。

 自然は何も語らないが、一生懸命生きている、そのことが、東田直樹くんへのメッセージ(沈

黙の言葉)となって、聞き取られている。

 東田直樹くんは、「異常」なのか?

 そうではないと、僕は思う。

 反対に、定型発達者の方が、この能力を失ってしまったのではないだろうか。

 僕は知らないのだが『源氏物語』には、光源氏が、月を見て涙を流すシーンがあるそうだ。

 昔の人は、自然の言葉(沈黙の言葉)に、よく感応していたのではないだろうか。

 現代人の方が、昔は聞くことができていた「沈黙の言葉」を、忘れてしまったのではないの

か。

(この項、了)

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