〜同類〜　

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　…私の人生で最良の日というのは、建設プロジェクトにかかわっているときである。

　目に見える結果を生み出す人たちとは、理解しあえるからである。私の設計が鋼鉄

　に変わり、形になっていくのを見ると、私はぞくぞくする。建設労働者たちは本部

　のお目出たい人たちのことをこぼすのが好きだ。設備機具や建設について分かって

　いない��背広にネクタイ″の連中のことを、あしざまに言う彼らに、私はぴたりと

　はまり込むのである。私は何年もたくさんの労働者たちや多くの契約者たちと働い

　てきた。彼らはみんなグチり、建設に関する戦いの話をしたがる。そんな連中と一

　緒に仕事をすることに、私は何の問題もないどころか、彼らに同化してしまう。私

　が建設労働者や技術者たちに居心地のよさを感じるのは、私たちが目で考える同類

　だからである。

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　これは、充分にありえることのように僕には思われる。

　テンプル･グランディンにとって、自分の視覚的な能力で設計した建物が、現実に建設されて

いくのを見ることは、「人生で最良の日」だ。

　また、「建設労働者たち」と話しをすると、ピタリとはまりこんでしまう。「背広にネクタ

イ」の人たちをあしざまに言うときは、ピタリとはまりこんでしまう。「背広にネクタイ」の

人たちは、基本的に、「言葉で考える」「会計士」タイプの人たちだ。

　僕は、一般社会の中にも、「視覚で考える」タイプの人たちというのはいるのではないか、

と前から思っていた。いわゆる「職人」というタイプの人たちだ。彼らは、言葉で考えるので

はなく、「目で考え」たり、「手で考える」ことをしている人たちだ。それらの人たちと、テ

ンプル･グランディンは、いわば、「目で考える同類」なのだ。

　本当は、健常者たちの中に、自閉症と共通性を持っている「同類」が、結構たくさんいるの

だという考えは、僕にはとても楽しい夢想だ。

　「目で考え」「手で考え」「足で考え」る人たち。

　そんな人たちがいなくなったら、この世界はさぞかし、「背広にネクタイ」の人ばかりの、

つまらない世界になってしまうことだろう。