〜「一品食い」〜

　長年、私は強度の偏食のある我が子に比べ、自分は味覚過敏は軽いと思っていたん

　だけど、実は意外にそうでもないことが段々わかってきたの。

　先日、クマ先生と話していた時のこと。

　食事のしつけの話をしていて、実はめちゃめちゃ味覚過敏だとわかった。

　それがね、お恥ずかしいんだけど、実は私、いわゆる一品食いな人なのよ。

　ほら、食事のしつけでは、おかず、ご飯、みそ汁……みたいにバランスよくトライ

　アングル食いしないといけないでしょ？

　へんちゃんは小さい頃から食事の仕方を親に監視されていてね。

　特に父親がうるさいのよ。

　「食卓とお腹の距離はゲンコツ１個分」

　「左手はお皿に添えなさい」

　「食卓に肘をついてはいけない」

　「食事中は正座」

　などなど。

　肘などついていようものなら、バシッ！と肘をしばかれたりね。

　とにかく食事スタイルに厳しい。

　で、いつも言われたのは、

　「さっきから見ていたら、おまえは同じおかずしか食べていない。みそ汁にも手を

　つけていない。きちんとおかず、ご飯、みそ汁の順番に食べなさい」ってこと。

　実は……苦手なの……昧が混ざるのが……。

　ご飯とおかずの味が混ざるのも、違うおかずどうしの味が混ざるのも、感覚的に苦

　手。

　だから、よほど意識しないと、気がつくと一品食いしてるのね。

　逆に一品ずつ出てくる懐石やフルコースは有り難いんだけど……。

　この話をクマ先生にしたら、クマ先生がびっくりして言った。

　「普通はな、おかずとご飯の味が混ざるのを楽しんで食べるもんやねんで」

　えっ（￣ロ￣；）

　そ、そうなの！？

　知らなかった！！

　びっくりしたけど、味覚過敏がなせる技だったんだよなあ……。

　きつく叱られ続けたことが何だか理不尽に思えるわ……。

　そういえば昔、母も一品食いこそはしないけど、別々に食べているのを父が見て、

　やっぱりチェック入れていて（支配型なので人に干渉せずにいられない父親）母が、

　「え？変かな」と言っていて、父に「変やんな？」と同意を求められて、内心自分

　もおかずとご飯は別に食べたい気持ちを抑えつつ、父にとりあえず同意して、ドキ

　ドキしたことがあったよなあ‥‥‥。

　親の会の相談会とかで、よく聞くんだけど、子どもが同じおかずばかり食べて、最

　後に白飯が残り、ふりかけや塩を欲しがって困るってお母さんの嘆き。

　いやあ、よくわかる。

　それはある意味、仕方がないかも。

　でも最近、新聞に載っていたけど、一品食いしてもトライアングル食べしても、栄

　養的にはなんの問題もないって。

　ならば、食べ方にこだわらず、楽しい食事時間を過ごした方がよほどいいんじゃな

　いかなあ。

　私ね、家での食事の時間が大嫌いだった。

　監視されて注意されるのも辛いし、だいたい何かあって怒られる時って食事時間な

　んだよね。

　母から父に報告がいくからさ、何かと。

　で、叱られて口の中にご飯が入ったまま、大泣きするはめになって辛かった。

　お陰で、神経性食欲不振にはなるしさ。

　プリン１個すら吐いて食べられなくなったの。

　だからさ、ちょっとくらいのことは気にせずに、皆で楽しんでご飯は食べようね。

　　　　　　　　　　○

　ごもっとも。大変、興味深い。

　学校でも、「一品食い」の生徒や「偏食」のある生徒（特に自閉症の子）は多い。

　総合支援学校の中にも、「三角食べ」を指導される先生がいるが、僕はあまり気にしない方だ

（と思う）。

　別に、ひとつずつ料理を食べたからと言って、誰かの「迷惑」になるわけではない。神経質に

なってまで直さないといけないものでもないと思っているからだ。栄養的にも、特に問題はない

だろう。

　だが、どうして「一品食い」になるのかは興味がある。

　へんちゃんによれば、「味が混ざる」のが、感覚的にイヤなのだ。

　それはとても納得した。

　それから、

　「親の会の相談会とかで、よく聞くんだけど、子どもが同じおかずばかり食べて、最後

に白飯が残り、ふりかけや塩を欲しがって困るってお母さんの嘆き。」

　これにも、共感した。

　僕の生徒にも、「一品食べ」で、「ごはん」だけを、ほとんど食べない子がいた。しょうゆや

ふりかけなどの、「味」をつけると、食べられるのだが、何もないと残してしまう。カレーや混

ぜご飯、おにぎり、なら食べられる。

　言葉があまり無い子だったので、理由が言えなかったのだが、一度だけ、「ごはん」を食べな

がら、「苦い」と言ったことがある。

　ああ、やっぱり、味覚（あるいは、嗅覚も）の過敏があるのかなあ、と思った。

　（この項、了）