〜親のしつけ〜　

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　　私の両親はしつけにはとても厳格でしたが、いつでも「人と違っているのは良い

　ことだ」と言って、私を育ててくれました。私は子どもの頃からうまく周囲にとけ

　こめず、奇妙なふるまいが目立ちました。まだ発達障害や高機能自閉症の存在も知

　られていなかった時代のこと、私の言動はわがまま勝手な性格のあらわれと見られ、

　問題児扱いされたり、いじめにあうこともしばしばでした。けれど両親は、私がど

　んなに奇妙なふるまいをしても、「他人と違う」という理由で叱ることは決してあ

　りませんでした。そのかわり、他人に迷惑をかけた場合は、常にきびしく罰せられ

　ましたけれど。

　　わが家は経済的にはあまり余裕がなかったのですが、とにかく好奇心豊かな一家

　でした。町で何か見たこともない食材、珍しい果物などを見かけると、高価なもの

　でも少しだけ買ってきては、分け合って味見するのが家族の楽しみでした。港町神

　戸に住んでいたので、海外からやってくる珍しいものとの出会いにはこと欠かなか

　ったのです。

　　こんな両親のおかげで、私は周囲の人々とうまくいかず、どんなに居場所のない

　思いをしても、自分の生まれ持った異質さそのものが「良くない」のだと、自分を

　全面否定してしまうことはありませんでした。自閉系人は、慣れないことや未知の

　ものに対して不安や恐れを感じることが多いものですが、私の場合、好奇心たっぷ

　りに育ったおかげで（不安は常にありますが）、一人で世界を旅してまわるほどの

　積極性や行動力を持つことができました。広い世界を歩き、見聞を広げたことで、

　世の中には多様な文化があり、ものの見かたや考えかたもそれぞれに違っているこ

　と、それが当たり前なのだということを、実際に身をもって経験することができま

　した。

　　常に好奇心を持って人と接し、相手を理解しようと努力すること。ものごとのと

　らえ方は人それぞれで、正解は決して一つではないこと。世界を旅して身につけた

　こうした感覚は、私が結婚し、波乱を繰り返しながらもどうにか十年間、この結婚

　生活を続けてこられたことに、重要な役割を果たしていると思います。

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　障害という概念は知られていなかったにもかかわらず、泉流星さんのご両親は、とてもまっ

とうで、良い育て方をされたのだと思う。そのおかげて、基本的に、泉流星さんは、「二次障

害」のようになって、自己評価が人生や社会に対しての「不適応」になることもなく、完全な

自己否定(自分はダメな人間だ)まで、下がることはなかった。

　もちろん、逆の言い方もできる。

　本を読むかぎりでは、泉さんは、人間関係や、夫との夫婦生活への不適応に悩み、「うつ

病」や「アルコール依存症」になって、生命が危険になる状態にまでいっている。その後、自

分の病名(アスペルガー症候群)を知ることで、自分の特徴をコントロールする方法を見つけら

れるようになる。

　現代の社会の段階では、アスペルガーは、泉さんのように、自己評価が下がらないくらいに

は育てられた人でも、泉さんくらいには苦労してしまう、というように、だ。