〜「君って本当に変なやつだよ」〜

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　　こういうと変に聞こえるかもしれないが、これまで夫がかけてくれた言葉の中で

　もとりわけ優しく響いたのは、「君って本当に変なやつだよ」というものだった。

　愛情表現としては珍しい部類に属する言葉だろうが、私には嬉しくてならなかった。

　この一言を聞くだけで、自分には無限の自由があるとわかったから。トムは私がみ

　んなと違っていることくらい百も承知で、それでもなお私と一緒に歩む気なのだ。

　そうわかる一言だったから。この言葉をかけられてからというもの、感覚過敏のこ

　とだって正直に打ち明けられるようになった。私さえ言う気があるならば、こんな

　刺激でいらいらしてしまう、過剰に反応してしまう、混乱してしまうと言ってもい

　いのだとわかったから。

　　手をつなぐのに、二人の指を交互にからませてこられると、今にも指を引き裂か

　れるように感じられること。軽くふんわり触れられると、肌の下を虫が這うような

　感じがすること。トムがある特定のオーデコロンをつけていると、口には唾がわき、

　鼻は焼けつき、胃はむかむかすること。あまり近くに立たれると思わず払いのけた

　くなり、それを抑えるには全身の力をふりしぼっていること。それをもう隠さなく

　ていいのだと思うと、本当に心が軽くなった。

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　とても、アスペルガーらしいと思えたので、引用した。

　「君って本当に変なやつだよ」は、たしかに、普通は「愛情表現」としては使わない。恋人

と手をつなぐのも、感覚の過敏がある自閉症者にとっては、大変なことだ。あまり近くに立た

れると思わず払いのけたくなる、というのも面白い。確かに、自閉症の子には、そういう振る

舞いをする子がいる。近寄ると、攻撃してくる子もいる(その子にとっては、信愛の表現が、恐

怖にしか思えないのかもしれない)。

　でも、リアン・ホリデー・ウィリーの営んでいる夫との関係は、とてもいいものだと思える

記述になっている。アスペルガーの人と、定型発達の人の夫婦というのは、こんな感じになる

のだと思う。