〜両親の愛〜

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　　私は自分で思っていたよりも、両親に大切にされていたんだと知ったわ。それは、

　実感というより納得ね。それでも、納得できた事実は大きいわ。

　　私はとにかく感情の引っかかりが浅いから、度々「気づかない」ということがあ

　るの。最近、身近な所に、私にとても似たものを発見したわ。携帯電話よ。いくら

　上等の機種にしたって、電波が届かなければ通じないわよね？　ことアスペルガー

　症候群に関してアンテナが拾える電波はとんでもなく少なくて、おまけに、圏外マ

　ークは表示されていないの。

　　私の両親は、私が圏外だと、ずっと知らなかっただけだった。おまけに、私自身

　も圏外だと知ったのは最近。

　　そういうわけで、私は今アンテナをたくさん立てられるように、こうやって本を

　書いているの。

　　自閉的だと感情が出ない、と自分で思い込んでいたのも「愛情の認知」を先延ば

　しにしていた原因かもしれない、と、最近考えるわ。自分の中に「感情」めいたも

　のが生まれてきた時、気づかなかったことにしよう、と思ったから。すごく怖かっ

　たの。「感情」が出たら、私は自閉症スペクトラムから閉め出されるかもしれない

　と思ったのね。

　　違うわ！　自閉的でも少しずつ感じ取れるようになるなんて、とても明るい結果

　よね。

　　私は感じ方が浅い。両親も子ども好きとはいえないわ。それでも、彼らができる

　範囲で最大の愛情を示していてくれたと理解できたら、それは素直に嬉しかった。

　ご飯を作り置きしておいてくれたり、経済的な援助だって、本当に私が憎かったら

　しなかったはずよね。

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　こういう記述をしている自閉の人は、多いと思う。ニキ・リンコは、確か、親は、家の「付

属物」だと思って、家具と同じようなものだと思っていたと書いている。

　僕が知っている自閉の子も、保護者の人は、一生懸命育てているのだが、あっけらかんとし

て、親が動くのは当然のことのように振舞っているように見える。

　でも、たぶん、それは違うのだ。

　感情が無い、ということではなくて。

　たぶん、感情が、親の行動とは結びつかないのだと思われる。

　本当は、藤家寛子のように、もっとずっと後になって、「わかる」のだと思う。

　普通の子は、逆だ。

　まず、親に愛情たっぷりに育てられて、「愛情」の直接性から感じて成長していくだろう。

自閉症者の場合、そこがうまく感受されないために、「愛情」の表現だと気がつくのがとても

遅れるのだと思う。