〜自閉症者にとっての「軽度」〜

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　　私の診断名には「障害」という言葉が使われていますが、私はこれを、「社会の

　中で当たり前に生活することが困難なレベルの不具合がある」という意味でとらえ

　ています。一見どんなに普通に見えようと、実生活では明らかにいろいろな不具合

　が起きているからです。就職すれば、周囲の人々を巻き込んでトラブルを起こし、

　職場に迷惑をかけ、自分はストレスで参ってしまう。最も身近な存在であるはずの

　夫とですら、コミュニケーションには相当の問題があり、今でも、ちゃんと意思を

　通じ合わせることができないこともしばしばです。

　　私の場合、知能に遅れがなく、言葉が使え、書かれたものならかなり複雑で難し

　い内容も理解することができます。けれどそれは、自分の能力の欠陥を頭では痛い

　ほど理解できていながら（それは生まれ持ったものなので）、思うようにコントロ

　ールすることはできない、という、情けなくもどかしいことなのです。また、非常

　な努力をして何とか表向き普通にふるまっていればいるほど、実際に感じている困

　難さや抱えている不具合は外から見えず、うまくわかってもらうことができない、

　ということでもあります。

　　もちろん、どんなに努力していても、時には奇妙なふるまいやおかしな発言をし

　てしまいます。けれど、そうした失敗の大部分は、一つずつ見れぼ特別驚くほどの

　ことではないため、誰でも多少は持っている風変わりな部分、という程度にしか受

　け取られません。実はそれが氷山の一角にすぎず、自閉系異星人である私の異質さ

　のほんの一部分がちらりとのぞいただけだ、ということは、私の日常をよく知る人

　以外には、およそ理解しがたいことなのです。

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　僕たちは、「軽度」の自閉症というのは、「重度」の自閉症者よりも、生活は楽だ、という

印象を抱きやすい。でも、実際にはまったく違う、ということが、とてもよく語られている文

章だと思う。これは、泉流星さんの、生きていくうえでの実感としての言葉なのだ。

　僕も実感的には、「軽度」の人の方が、生きていくのは難しいことなのではないか、と思う

ことがある。一見すると「普通」に見えるために、なかなか周囲には理解されにくいからだ。

　「軽度」であるために、周囲の人からは理解してもらえない。その上、泉流星さんは、言語

力もあるために、人並み以上に物事がよく理解できる。しかし、理解できるのに、やろうとす

るとできない。そんな自分が情けなく、もどかしく感じられる。それは、とても苦しいことに

違いない。放っておかれれば、自己評価が下がっていくのは当然だ。