<内側から見た自閉症>

〜成澤達哉〜

『自閉っ子、自立への道を探る』

〜余暇の過ごし方〜

          ○

 服巻 …ところで、週末はどう過ごしていますか?

 成澤 そういう質問の意義が今ひとつわかりませんが…。まあ、晴れたら洗濯、食

 料の買い出しという感じですか。雨が降ったら室内でのんべんだらりと過ごします

 ね。

 服巻 のんべんだらりと過ごすことは苦痛ではありませんか?

 成澤 う〜ん……。

 服巻 どうしてこういう質問をするかというと、土日の過ごし方で苦労している人

 が多いからなんです。

 成澤 ああ、そうなんですか。

 服巻 だから、成澤さんがどうしているかを訊きたかったんです。成澤さんは平日

 が大変で、土日は身体を休ませるわけですね。人によっては、身体を休ませましょ

 うというと、休ませ方がわからないと言うこともあります。ぼーっとしているとい

 らいらするという人もいるんです。

 成澤 ああ、それですね。たしかに、何もしないのは精神的に負担になります。私

 も、何かやっていないと落ち着かないんです。晴れた日には出かけますし、雨が降

 るとインターネットをします。

 服巻 つまり、「のんべんだらり」と言うのは、インターネットをするということ

 ですね。やはり何もやらないのは苦手なのではないですか。お風呂入るのひとつで

 も、中で読むマンガを決めている人もいるんですよ。それが終わったらお風呂から

 出ていいという合図になるんですね。じゃないと終了の時間がわからないんです。

 毎日マンガがいるんですよ。

           ○

 「余暇の過ごし方」というのは、とても重要だ。

 僕たちにとっては、ぼーっとしているのは、有効な時間の過ごし方なのだが、「暇な時間を

いかにつぶせるか」、というのは、自閉の子には、とても難しい課題だ。

 そう考えてみると、僕の受け持ったことのある生徒で、保護者の方が「休日の日には、ずっ

と家でパソコンをしています」と言われていた子がいた。たぶん、その子も、インターネット

が好きということは、もちろんあるだろうが、時間のつぶし方が難しかったのだと思う。

 マンガを読まないと、お風呂から上がる時間がわからない、というのも面白い。読み終わっ

たら、それが風呂から上がる合図だと。

 時間の感覚が抽象的でわからないから、視覚的な時間に変換しているわけだ。

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