〜自閉症者か、否か〜

　メアリー・ニューポートは、自閉的な資質のために、小さい頃から家族と折り合いがつかな

かった。あげくの果ては、家族から見放され、得体の知れない「宗教団体」にいれられてしま

う。そこで、強制的に結婚させられ、ふたりの子どもを産む。夫は、ドラッグとアルコールの

常習者で、暴力で妻を支配しようとする人だった。

　ようやく夫と別れたのが、二十二歳。その時の立ち姿がこれだ。

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　　わたしは二十二歳で、学歴は六年。子どもがふたり。わたしたちのやせこけた体

　からはぼろ布のような服が垂れ下がり、持ち物はバッグひとつにすべて収まってい

　た。それでも最高に幸せだった。生まれて初めて、ほかの人がなんと言おうと、ど

　う考えようと、自分は頭のおかしな愚か者でないと思えた。

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　メアリー･ニューポートの姿は、人間として、とてもまっとうで、美しいものだ。

　こういう認識（自己肯定意識）に立てるまでに、どれだけの苦難がメアリー･ニューポートの

人生にあったのか、計り知れない。

　誰が何と言おうと、「物事を深く考える力と美しいものを作り出す能力があると、心のなか

ではっきりわかっていたのだ。」

　この認識は、素晴らしいものだ。たとえ、学歴は六年で、ふたりの子持ちで、持ち物はバッ

グひとつであろうとも、自分自身が幸せであることが実感できている。すでに、ここにおいて

は、メアリーが「自閉症者であるか、否か」は、もう関係がないと言っていい。さらに言え

ば、この認識は、太古の人間であろうと、現在の人間であろうと、変わりなく、同じ認識を持

ちえるものだ。

　「定型発達」者でも、ここまでの認識に至っている人は少ないと言えるだろう。