〜結婚相手〜

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　風　（結婚した）相手はとても評判の悪い人でした。出会った当時は妻子がいたん

　ですが、奥様が病気で亡くなりました。十歳以上年上で、借金がある人でした。私

　は収入があって若くて、家事もやってあげて、今思うと利用されていたんだと思い

　ます。当時はそのことに気づかなかったんですが。親も職場の人も、全員が反対し

　たんです。でも相手に洗脳されていたんでしょうね。私はとにかく一つの考えがイ

　ンプットされたらそれ以外には考えられなくて、「この人と結婚するしか道はない

　！」と強く思いこんでいて、他に道がなかったんです。結婚したから、離婚して別

　れられたのだと思います。それがなかったら、ずっと取り憑かれて別れられていな

　かったかもしれません。…

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　アスペルガーの人の傾向として考えると、ありえることだなあ、と思う。「結婚」も「離

婚」も、普通、僕たちが考えるイメージとは違っている。

　定型発達の場合、「恋は盲目」という状態はありえるが、風花さんの場合は、脳が一度イン

プットしてしまうと変更するのが難しい、ということだ。それ以外の選択肢は考えられなく

なってしまう。しかし、反対に、そのために「離婚」することができた。確かに、そういう過

程を経ないと、自分で納得することはできなかったかもしれない。それはとても、アスペルガ

ーらしいなと思う。

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　自閉症者の本を読んでいると、自閉症者にとっての「結婚相手」というのは、「人生の良き

パートナー」という度合いが、強いと思う。そういう人にすぐに出会えるのか、なかなか出会

えないのか、は、人生にとっては、相当重要な問題だ。

　風花さんは、現在は、再婚されて、幸せに暮らしておられるらしい。良いパートナーにめぐ

り会えた、ということだと思う。

　現在の再婚相手は、どんな人なのか。

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　風　（再婚相手は）なんというか、邪魔じゃない人なんです。私にとっては、たい

　ていの人は邪魔なんですね。気配が邪魔だったり、においが邪魔だったり。でも夫

　は邪魔ではないんです。

　浅　　私は別の成人当事者からも、配偶者について語るのに「邪魔じゃない」とい

　う表現を聞いたことがあります。そのときは意味がわからなかったんですが、お二

　人から聞くとわかったような気がします。感覚過敏がある方にとっては、「邪魔じ

　ゃない」のはとても大切なことなのでしょうね。

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　とても特徴的な言い方だが、充分にありえることだと思う。

　本当は、僕たちも、無意識のうちに、においや気配で、人間を判断したり、察知したりして

いるのだと思う。ただ、あまりにも無意識であるために、言葉にならないし、「感覚過敏」の

ある人ほど、自覚化できないだけだと思う。