〜高さと階段〜

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　　驚くことでもないだろうが、ぼくは自分がかなり浮いた存在、すごく変わった子

　どもだとわかっていた。最初に心底怖いと思ったのは、高さだった。そのころ住ん

　でいたのは、ニューヨーク州トルーマンズバーグ。父はそこで兄弟とシボレーの販

　売代理店を経営していた。ぼくは家の階段を降りるのもおっかなびっくりで、とて

　もつらかったのを覚えている。やがてその恐怖をいくらか和らげる方法を思いつく。

　手すりをぎゅっと握って、うしろ向きにすこしずつ足をずらし、文字どおり一段一

　段降りるのだ。用心しながら、右足を下の段に下ろし、次に同じ段に左足をすべら

　せるように下ろす。のろのろとしたその行程を終えるには、とんでもなく長い時間

　がかかったが、下に行くにはそれしか方法がなかった。

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　こんな人もいるんだなと意外だったので、引用した。

　僕の印象では、自閉の子というのは、高いところが好きな子が多い気がしていたので、驚い

たのだ。よく高いところ（ジャングルジムとか、木とか）に登っては、下を見下ろしている。

　逆に、こんなに高いところが嫌いな子もいるんだなと思った。自閉症には、本当に、対照的

な症状が存在する。

　僕の感覚では、かえって、階段を後ろ向きで降りる方が怖い気がするのだが。

　見える方が、かえって怖い、ということだろうか。

　視覚的な距離感覚がうまくつかめないために、怖いのかもしれない。