〜キム・ピーク〜

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　　キム・ピークは奇跡の人だ。彼が一九五一年に生まれたとき、医者は両親に、歩

　くことも学ぶこともできないだろうから、施設に預けたほうがいい、と言った。肥

　大したキムの頭には水が溜まっていて、言語を覚えたり会話をしたりするために必

　要な領域のある左脳に障害が生じていた。一九八八年に脳神経科学者が彼の脳をス

　キャンしたところ、彼には脳梁（左脳と右脳とを分けている部分）がないことがわ

　かった。しかし、彼は一歳半で字が読めるようになり、十四歳で高等学校のカリキ

　ュラムを修了した。

　　キムは何年もかけて膨大な情報を記憶してきた。その内容は歴史年表からスポー

　ツ、文学、地理、音楽に至る十二教科以上にわたっている。しかもキムは、本を開

　いて二ページを同時に読むことができる。片目で一ページずつ、ほぼ完璧に記憶す

　る。これまで九千冊以上の本を読んできたが、そのすべての内容を記憶している。

　カレンダー計算もできる。

　　一九八四年、キムと父親は、テキサス州アーリントンにある知的障害者協会の会

　議で、脚本家でありプロデューサーのバリー・モローに会った。その結果『レイン

　マン』という映画がつくられた。ダスティン・ホフマンはキムと何日かいっしょに

　過ごしてキムの才能に驚き、キムを世界に知らせるべきだと父親に言った。以来、

　キムと父親はアメリカ合衆国中をめぐって、百万人以上の人々に講演をしてきた。

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　本当は、映画『レインマン』のモデルになったサヴァンの自閉症者であるキム・ピークと、

ダニエル・タメットの出会いの箇所を引用したかったのだが、キム･ピーク自体の紹介がとても

面白かったので、まず引用した。

　キム・ピークは、自閉症のサヴァン症候群の中でも、群を抜いて特異な存在であることがと

てもよくわかる記述になっている。キム・ピークは驚異的な記憶力を持っているが、社会的な

生活能力は、ほとんどないらしい。彼の記憶力は、写真のように視覚的に記憶してしまうの

で、「応用」がきかない、ということなのかもしれない。

　また、本の二ページを同時に読むことができ、片目で一ページずつを暗記できるというの

も、驚異的だ。それは、脳梁がないために可能になったことなのかもしれない。右脳と左脳の

それぞれの脳で記憶ができるのかもしれない。