<内側から見た自閉症>

〜池上英子〜

『自閉症という知性』

〜「映像が言葉」〜

  ラレの頭の中は、いったいどうなっているのだろう。この日、私は少し踏み込ん

 で、視覚や聴覚が人より鋭く、感覚過敏があるのかどうかを尋ねてみた。

 「聴覚の感覚過敏はないと思う。でも、われわれ非定型の人間はよく絵や映像で考

 えると言うよね。それは僕も絶対に本当だと信じている」

          〇

 「この世界から心を別のゾーンに飛ばして違う世界に行くんだけど、それってすご

 くリラックスするし、インスピレーションがふってくる感じなんだ。要するに、た

 だ座って自分の考えをヴィジュアライズ(視覚化)するんだよ」

         〇

 自閉症者の「絵や映像で考える」という発言は目にすると、書き留めておくことにしているの

で、ここでも書き留めておく。

 テンプル・グランディンは、自分は「絵で考える」と言っている。ラレさんは、「映像で考え

る」タイプの人だ。ラレは、コンピューターの仮想空間に自分の映像世界を作り出している。そ

れは、言葉ではとても表現しきれないものだろう。今はコンピューターがあるので、とても助か

っているだろう。ラレさんにとって、「映像が言葉」なのだ。

 (この項、了)

もどる