<内側から見た自閉症>

〜岩波明〜

『女子の発達障害』

〜オードリー・タン〜

  新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るい、特にイタリア、スペインなどの西

 ヨーロッパと米国における被害は予想もしないレベルとなりました。

  欧米の先進国がコロナ対策に苦慮している中で、もっとも対応に成功していると

 報じられたのが台湾です。

  台湾の蔡政権は2020年1月に、いち早く中国との人的往来をほぽ完全に遮断しま

 した。それに加えて、スマートフォンのアプリを利用した方法でマスクの買い占め

 を防ぐなど、防疫体制の構築に力を注ぎました。その結果、他のアジア諸国と比べ

 ても、被害はかなり小さく抑えられています。

  この台湾のコロナ対策において重要な役割を演じたのが、「はじめに」でも少し

 ふれたIT担当大臣である「38歳の天才」、オードリー・タンです。彼女は新たな

 アプリを作成し、マスク買い占めの防止策を徹底し、健康保険証の番号でマスクを

 買える日を指定し、購入履歴を管理しました。さらにマスクマップのアプリを作り、

 マスクが買える店の位置や、その店の在庫状況や販売時間も一目瞭然にしたのです。

  優秀なプログラマーであったオードリーは、19歳で独立しネット企業の社長とな

 りました。その後アップルの顧問も務めています。IQが180とも言われるオー

 ドリーには、発達障害(特にASD)の傾向が顕著に見られます。彼女の学歴は中

 学校中退で、通常の学校には適応できず、9年間で3つの幼稚園と6つの小学校を

 転々としました。同級生からはいじめに遭い、学校のルールにもなじめませんでし

 た。

  オードリーは男性として生まれましたが、性別違和を感じ、20代で性転換の手術

 を受けました。彼女はマイルールをいろいろ持っていて、25分間仕事するごとに5

 分間の休憩を取らないといけないし、毎日必ずメールボックスのメールを捨てて、

 「ToDoリスト」にやるべきことを残しません。また毎週決まった時間に、フラ

 ンスにいる精神科医と45分間の対話を行っているなど、ASD的な「こだわり」の

 特徴が濃厚です。

  人類の歴史の中でも、発達障害の特性を持つ人々は科学や芸術に新しい光を吹き

 込み、社会を大きく変革してきました。「ネットの神童」で「無私の公僕」である

 オードリー・タンも、そういった天才のひとりです。この世界的な危機を救うのは

 発達障害のマインドを持つ人たちなのかもしれません。

(『女子の発達障害』 岩波明)

          〇

 コロナ対策で、台湾のオードリー・タンと言う人が有名人になっているというのは知っていた

が、詳しいことは全く知らなかった。

 岩波明の記述を読むと、確かにトランスジェンダーのASDタイプの人であるように見える。

 こういう人がいるんだなと、心の中に知っておくことは大事なことだと思う。

 岩波明が言うように、人類の歴史の中で、発達障害の特性を持つ人たちが、社会を変革してい

く原動力になった事は、確かだと思える。

 環境活動家のグレタさんも、そういうタイプの人なのだろう。

 発達障害タイプなら、うんざりするような権力者への「忖度」とも無縁に行動できるだろう。

 もっと、遥かに遡れば、テンプル・グランディンの言うように、「新石器」を発明したのは、

ASDタイプの人だったかもしれない。「障害」という呼び方は、いつの間にか主流になった定

型発達の人たちの、ここ数千年の呼び方に過ぎないのではないだろうか。実際には、それ以前の

数万年は、<対等>(無区別)の時間で一緒に生きていたのだ。

 (この項、了)

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