〜「もっとも重要な特性」〜

　※「発達障がいの可能性があると診断されました。どうしたらよいのでしょうか？」

　　という質問に答えて。

　　できるだけ、ふつうの生活ができるように、必要なことから始めていかれたらよ

　いのです。

　　偏食があるなら、その子が食べられるものをつくってあげる。食事は大切です。

　　肌触りがざらざらする服が着られない子もいます。

　　裏返さないと着られない、新品は着られない。

　　でしたら、何回も洗濯をしてヨレヨレにしてから着せてあげてください。そのう

　ちに、裏返さなくても着られるようになります。

　　くれぐれも、無理は押しつけないでください。

　　偏食を心配して、食べられるように工夫されるのはよいのですが、無理矢理に食

　べさせる必要はまったくありません。多少無理をして、何かができるようになると、

　「発達した」と思う人がいますが、それは傷を残すことも多いのです。

　　この子たちがもっているもっとも重要な特性をひとつだけあげるとしたら、

　「物事を忘れることができずに、苦しんでいることだ」

　　そう言ったのは、何年か前に来日して、講演をされたアメリカ自閉症協会の理事

　をしていたチャールズ・ハートさんです。ご自身も自閉症の子どもの父親であり、

　自閉症の専門家である彼は、わが子だけでなく、たくさんの自閉症の人に会ってき

　て、しみじみと思うと言っていました。このことばを、みなさんにも覚えていて欲

　しいと思います。

　　　　　　　　　　　〇

　チャールズ・ハートさんという人は、僕にはまったくの未知の人なのだが、自分の子どもが自

閉症で、他にもたくさんの自閉症の子どもを見てきたのだという。

　その人が、自閉症の「もっとも重要な特性」とは、「物事が忘れることができずに、苦しんで

いることだ」と発言したという。

　ハートさんは、そのことで苦しんでいる人を、たくさん見てきたのだと思う。

　自閉症は、映像（画像）として、微細に、かつ鮮明に記憶してしまうから、何度も思い出して

苦しむのだと思う。僕も今まで、数々の失敗をしてきたが、時々、思い出しては、苦しくなるこ

とがある。それでも、鮮明な画像までは思い浮かんで来ないから、助かっているのだろうと思

う。

　「物事を忘れることができずに、苦しんでいる」ということは、自閉っ子には、十分にあ

りえることだ。

　（この項、了）