ずいぶんと、身に染みて読みました。 自分には関係ない事だとは思っていませんでしたが、こうやって、年を取って、身体も思うよ うに動かなくなり、仕事はやめたくなっても、お金がないので働かざるをえない。 年金に頼っても生きてはいけないし、でも、病気になったら、たちまちにお金はなくなってし まうだろうなと思わされます。 一歩間違うと、僕もすぐにそうなるだろうな、と。 それはもう、実感としてわかりますね。 『思想家 河合隼雄』 中沢新一・河合俊雄
引用したいところがいっぱいあったのですが、ＯＣＲが使えないので、引用できません。 とりあえず、一番印象に残ったお話を。 鷲田清一さんが、文章を寄せているのですが、河合さんとこんな話をしたことがあるんだそう です。 鷲田さんが、入院した時があって、自分のベッドの前に老人が寝ていて、昼間でも起きてるか 寝てるかわからないくらいの状態だったんだそうです。 そこへ、昼休みに、ある看護婦の人がやってきて、おじいさんのベッドのそばに座って、顔を 伏せて寝るんだそうです（笑）。 怠け者の看護婦だなと思っていたそうなのですが、見ているうちに、少し違うことに気がつき ます。 その看護婦が寝ている時には、おじいさんは、目を開けているんだそうです。 そして、他の病院関係者が近づいてくるのがわかると、その看護婦に人が来ることを教えてや るんだそうです。 そのおじいさんは、いつも寝ているような感じなんだけども、その看護婦が来ている時だけ は、目がハッキリと開いて、その看護婦の目の代わりになって、看護婦に知らせてやるわけです よね。 それは、看護婦が意識していないとしても、看護婦は、「そばにいる」というだけで、老人の 「ケア」をしていることになるのではないか、と。 そして、続けて… 生きる力というものは、じぶんの存在が他人のなかで意味があると感じるところか ら生まれる。この若いナースにはそういう想いはなかっただろうが、それでも彼女が そこにいるというただそのことが、意にはなくともおじいさんに力を与えた。たとえ 怠慢以外のなにものでもないにしても、彼女がただそこにいるということで、逆に、 おじいさんはそこにじぶんがいることの意味を見いだした……。そんなふうにわたし は考えた。 〇 そのあとである。河合さんが「臨床の知と普遍性の問題」というのを出してこられ たのは。…「われわれは助けるばかりじゃない。われわれが助けられる側に回ること が、すごい意味を持っているんだ」という方向ではたしかに普遍性への途がありうる が、「八〇歳の人が来たら、上で寝るんですな」というマニュアルの方向に持ってい ったら元も子もない。要は、「どういう普遍的なほうへ話を持っていくか」が問題で、 「個別性から普遍性に至る道をちょっと間違えたら失敗する」とおっしゃったのであ る。 〇 「個別性から普遍性に至る途」…。 なるほど。さすが、です。 学校でも、こういう場面はよくあります。 でも、学校では「普遍性に至る途」の場面はたくさんありますが、だいたい「マニュアル化」 の方向に行ってしまいます。その方が簡単だからでしょうね。 あまりにも日常の余裕がなくなっているために、普遍的な途について考える余裕がない、とい うこともあります。
考え方が、似ているんだろうなと思っています。 面白かったです。 ムーミンは、確かに、発達障害者の世界観と親和性がある気がしますね。 驚きました。 トーベ・ヤンソンは、発達障害タイプの人かもしれませんね。 ムーミンには、それが反映されています。 〇 ◎トーベ・ヤンソンの手紙の言葉◎ お願いだから、一度だけこれを言わせて、散々聞かされてもううんざりなのは、社 会的責任、社会への認識、多数派という言葉。はっきり言っておくけど、社会的傾向 のある芸術なんてわたしは認めない。わたしが信じているのは芸術のための芸術よ、 以上！ 〇 スナフキンは、自分のしたいことをぜんぶ禁止している立てふだを、残らず引きぬ いてしまいたいと、これまでずっと思いつづけてきました。ですから、 （さあ、今こそ！） まず、『たばこを吸うべからず』のふだから始めました。 つぎには、『草の上にすわるべからず』をやっつけました、 それから、『笑うべからず、口笛を吹くべからず』に飛びかかり、 つづいて、『両足で飛びはねるべからず』を、ずたずたにふみつけました。 〇 （雪って、こんなふうにふってくるのか。ぼくは、下から生えてくるんだと思ってい たけどなあ） ムーミントロールは、そう思いました。 〇 ちびのミイはいつでも、自分ひとりでたのしむことを知っていました。自分がなに を考えようと、春がどんなに好きであろうと、それを人に話す必要を少しも感じなか ったのです。 〇 なるほど。ムーミンの読み方がわかった気がします。 僕は、養護学校に勤務して、初めて宮沢賢治の言葉の世界が読めるようになりましたから、そ ういうことってあるんだと思います。
「共感する能力が乏しい」ということなんですね。 確かに、そう考えるとわかりやすかったです。 トランプ大統領も、サイコパスということになります。 一番驚いたのは、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラ は、典型的なサイコパスだ、ということで。 そう思ったことはなかったけれども、ああ、なるほど確かに、と思いますよね。 スカーレット・オハラは、自己中心的で、自分が欲しいと思ったものは、相手の気持ちも考え ずに欲しがります。幼馴染のメラニーの迷惑をかけても関係ありません。 レット・バトラーが愛情を注いでも、意に介しません。 でもアメリカ人から見たら、自己主張の強い女性、決してへこたらない、というのは美点だと 感じられるんでしょうか。 〇 スカーレットには真実の愛をつかむ能力がなく、それは修正できるものではない。 さらにクレックレーは、彼女の「自己中心性はほぼ絶対的である」と述べている。ミ ッチェルは、この賞賛に気をよくした。そして「注目されたり称賛されたりするのは 大好きだが、実際の深い感情をまったく理解せず、他人から関心をもたれてもいっさ い反応しない冷淡な女性」を国民が拍手をして受け入れてくれたことに戸惑うと同時 に、その人気ぶりを面白く思っている、と述べた。 この本もちょっと衝撃的に面白かったです。 深く考えさせられました。 角田忠信さんの『日本人の脳』が出てきます。 日本人は、「虫の声」を言葉として、左脳で聞いている、（欧米人は、虫の声は、雑音として 聞く（インセクト・ノイズ））ということを角田さんが実験で証明したのが『日本人の脳』なの ですが、実験として疑わしい、という説があったんです。ちなみに、吉本隆明さんは、そんなこ とはない、いい実験だ、と言っておられました。 それが今は、脳の検査方法が進化したので、もっと信頼のできる形で実験ができるようになり ました。それで、角田さんの説は妥当である、と考えていいようです。 それで、虫の声を言葉として聞くような民族は、他にどこにいるのか、と言うと、ポリネシア 系の言葉と日本語だけなんだそうです。 母音の音だけで、意味がある言語が多いんだそうです。 それで、そういう言語は、文章の「主語」が省略されることが多い言語なんだそうです。 確かに、日本語は、主語を省略することが多いです。欧米の言語は、主語がつくことが多いん です。 なかなか面白いですよね？ そして、これです。 〇 日本人が、「わたくし」「俺」「自分」「手前」「あっし」「あたし」のように、 多くの自己を表す言葉を持っているのは、様々な人間関係の認知が音声となっても表 出されてしまっているからである。日本語の自己を表す言葉には、「純粋な」自己に 加えて、発話がなされている時の人間関係の認知の情報も含まれているのである。 〇 欧米だと、これはすべて「Ｉ」で表現されることになります。言葉の中に、関係のニュアンス はありません。「Ｉ」という意味だけです。 これは、吉本隆明さんの言語論で説明可能です。 吉本さんの言語論では、それぞれの「単語」に指示表出と自己表出の水準が込められているこ とになりますから、 『自己肯定感を高める子育て』 とても良い本でした。 教育に関わって４０年くらいですが、現在は、結局、「自己肯定感」が大事なんだな、と思う ようになりました。 この本は、文字通り、「自己肯定感を高める」ことがテーマなのですが、ポリヴェーガル理論 で説明しています。それは納得できるものでした。僕もとても参考になりました。 で、「不登校」についても調べてみているのですが、「不登校」の説明もポリヴェーガル理論 を使う人が多い気がします。 自分でもよくわからないけど、「学校に行く気がしない」し、行きたくない理由がよくわから ない、というのは、やはり神経レベルで拒絶の意識が出てきている、ということだと思えます。 |