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　　自閉症の犯人捜しで今、第一容疑者と目されているのがミラーニューロンである。

　先天性脳障害である自閉症の主要特徴は共感、模倣、言語スキル、そして、他人の

　心的状態の内的モデルを形成する能力の欠如だ。言い換えるなら、ミラーニューロ

　ンが専門にしている機能がそっくり欠如しているのである。先頃、自閉症児のミラ

　ーニューロン系は脆弱ないし欠如していることをＶ・Ｓ・ラマチャンドランが確認

　した（しかも、皮質のボディ・マップがごちゃ混ぜになっていた。これが重大な意

　味を持つか否かはいまだ解明されていないが、何らかの形でミラーニューロンの欠

　損と関係している可能性がある。自閉症児は触れられることに過敏でもある）。彼

　らの精神的孤独、遊びの欠如、乏しいアイコンタクト、生物界に対する無関心はす

　べて、ミラーニューロン系の機能不全と一致している。自閉症児が顔の表情をまね

　しようとしても、その感情や意味は理解していない。悲しい、腹が立つ、嫌だ、び

　っくりした……という感情がどういうものか、周囲の人々の気持ちと結びつけるこ

　とをしない。顔や身体が情動を表すのに重要であることを感じていないらしい。見

　て、行うことによって学ぶことができないのである。

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　僕には、この考え方には、異論があるのだが、どうだろうか。

　自閉症の症状に、ミラーニューロンが関係している、ということは言えるのかもしれないの

だが、少なくとも、この著者には、自閉症は「脳の障害」であるとしか「先天的に」捉えられ

ていないように見える。もちろん、自閉症者の中には、「見て行う」ことが、驚異的にできる

人たちもいる。そこから、「抽象的な思考」に移行することが難しいだけだ。

　問題は、たぶん、ふたつだ。

　�@　自閉症というもの自体が、まだよくわかっていないこと。

　�A　人間の脳そのものが、まだよくわかっていないこと。

　自閉症の症状が、ミラーニューロンの機能不全であるとしても、ミラーニューロンの機能不

全の状態は、本当に、「脆弱」であり、「欠如」でしかないのか。

　それは、外側から見たまなざしだけであり、自閉症者の＜内側＞から見たら、それは豊饒な

イメージに満ちた世界である、ということがありえるのではないのか。

　（この項、つづく）