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　…チェンバレン氏は、木々や野の花の神秘に気づかせてくれた恩人である。おかげ

　で、私の小さな愛の耳には、カシの木を流れる樹液の音が聞こえ、木洩れ日が目に

　見えるようになったのだ。

うす暗い地中に閉じ込められた木の根は 　　地上で梢が受ける喜びを分かち合い 　　太陽の光、広々とした大気、鳥たちを想像することができる 　　だから私も、自然の共感によって、同じ行いができるのだ

　　この詩のように、目に見えないものの存在に私も気づいたのである。

　　人間には、人類が有史以前から経験してきた、印象や感情を理解できる能力があ

　るように私には思われる。一人ひとりが、緑の地球とささやく水の記憶を潜在意識

　の中に持っている。だから、たとえ目と耳を失っても、この過去からの贈り物を奪

　うことはできない。この受け継がれた能力は、「第六感」のようなもの−−見、聞

　き、感じることが一体となった魂の感覚とでもいえばいいだろうか。

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　ヘレン・ケラーが、「魂の感覚」と呼んでいるものは、自分の内なる感覚であり、感覚が分

化する以前の「共感覚」の状態であると言っていいと思われる。

　ヘレン・ケラーは、視覚と聴覚を失い、触覚によって、それらを総合的に補うことで、世界

をとても豊饒なイメージとして体感している。とうてい、貧弱な世界だとは思えない。

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　　人間には、人類が有史以前から経験してきた、印象や感情を理解できる能力があ

　るように私には思われる。一人ひとりが、緑の地球とささやく水の記憶を潜在意識

　の中に持っている。

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　という記述には驚いた。

　これは、ヘレン・ケラーの正直な「内面の感覚」の告白であり、とても重要な言葉であると

僕には思われる。ヘレン・ケラーは、当時としては誰も到達できていないところで、世界を理

解し、感じていた人なのではないだろうか。

　（この項、了）