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　　カスパー・ハウザーは、まず、ダウマー先生の宅では、塔にいたときの藁布団の

　かわりに、寝所には普通のベッドをあたえられたのだが、それが彼にはこの上なく

　気にいった。よく、世間に出てから見たもので快適な唯一のものはベッドで、ほか

　の物はみな感心しないと言っていた。

　　ベッドで寝るようになってから、はじめて夢を見ているが、しかし最初はそれが

　夢だとは気がつかないで、目がさめてから先生にむかって、それを本当の出来事の

　つもりで語るのであった。覚醒と夢との区別は、後になってはじめてできるように

　なったのである。

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　カスパー・ハウザーは、ベッドで眠るようになって、初めて「夢」を見るようになった。

　もちろん、それ以前でも「夢」は見ているはずだが、彼の現実的な環境や生活のサイクルの

中では、寝ている「夢」と覚醒している「意識」とは、連続性であり、格別に区別する必要の

ないものであったと考えられる。

　僕も、かつての養護学校の生徒で、「僕はよく正夢を見るのですが、どうしてでしょう」

と聞いてきた生徒がいた。彼もたぶん、夢（の無意識）と覚醒（の意識）の状態が、連続的に

感じられていたのではないだろうか。

　そう考えると、古代人も、「夢」が現実になった、と感じることができやすかった、と言え

るかもしれない。

　（この項、了）