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　　生から死への変化は、血液の消失とともによく起こるということを、古代人は気

　づいていたはずだ。そして、新しい生命を作り出す女性たちが、月ごとに天の月に

　同調して出血し、その流れが止まると、重要な九つの月が通過する間は血が腹をふ

　くらまし、さらに新しい生命の誕生を導くという現象に、気づかないはずがない。

　　こういった事実を認識してから間もなく、生と死、血と誕生の関係を分けること

　のできないものだと考え、血液の再生力と回復力を信じるようになったのだろう。

　最初の秘蹟は血を使用したものだったにちがいない。人類の歴史を通して供犠やイ

　ニシエーションの儀式の中心には血がつねに使われていたのである。今でも、聖体

　拝受のような秘蹟の儀式などでは、ぶどう酒の聖別といったシンボリックな形で血

　の活用がつづいている。しかし、ぶどう酒が発明されるはるか以前から、もっと基

　本的なシンボルが存在していた。それは血に似ていることから選ばれた、大地その

　ものの一部だった。

　　オーストラリアの原住民の伝説によると、ウンティッバの女性たちが、性器から

　大量に血液を流し、それが地面に沈んでいって地球の赤オークルの鉱床を作ったの

　だという。オーストラリアの沿岸地域には、七〇人強の男性が探険隊を組織して未

　開拓の険しい奥地に入って行き、「夢の国」にある神聖なオークルの鉱山へと旅す

　る民族が、今でも住んでいる。そのオークルの鉱床は、特別なイニシエーションを

　受けた老人のみが、手をついたまま這っていかないと採掘できないことになってい

　る。　　　（『アフリカの白い呪術師』）

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　アフリカ（的段階）の「血」のイメージのつながりが、よくわかる伝承になっていると思

う。

　確かに、出産や生命の誕生や死は、「血」のイメージと深くつながっている。原始人は、そ

ういうことがちゃんとよくわかっていたに違いない。

　また、女性の性器から流れた血液が、赤オークルの鉱床を作った、というのも、「対称的な

思考」のひとつだと言えるし、僕の言い方で言えば、「視覚で考える」段階を象徴している

と言えるのではないだろうか。

　原始人（初期の人類）は、地面の下に赤い鉱床が見付かったときに、単に「赤い絵の具が見

付かった」と考えるのではなくて、女性の血液が固まったものだ、と「象徴的思考」を駆使す

ることによって考える存在だった。そう考えることが、普通の発想だった。

　（この項、つづく）