〜「マクドナルド」〜

　　ちょっとした成功に気をよくして、デーンの５歳の誕生日パーティーを開くこと

　にした。問題は場所だ。自宅にゲストを呼べば、デーンは泣きわめくだろう。私は

　中立地帯を探しまわった。そこである新しいファーストフードレストランに目をつ

　けた。支配人に話をすると、どんな障害児でも歓迎すると約束してくれた。

　　このレストランに深い感銘を受け、ロッドに一刻も早く話をしたいと思った。き

　ちんとした身なりの若いスタッフの笑顔とマナー、そして安全なフェンスで囲まれ

　た子供用の遊び場について熱を込めて話をすると、ロッドは聞いた。「それ、どこ

　にあるの？」場所を教え、私はさらに加えた。「それに食事が出てくるのを待つ必

　要もないのよ！」彼に爆笑され、なんだか恥ずかしい気分になった。「まるで、こ

　れまでマクドナルドのことを知らなかったみたいじゃないか！」

　　マクドナルドのスタッフはとても協力的で、パーティーでデーンが癇癪を起こす

　ことはなかった。ゲストの子供たちが食事を楽しみ、遊び場でわんぱく三昧を繰り

　広げるなか、デーンとジェニファー・エメリー・スミスは窓際の特等席に静かに座

　っていた。私はシスターのマーガレットと一緒に、必要なときにすぐ動けるように、

　目を光らせながら裏手に姿を隠していた。

　　デーンは遊びには加わらなかった。私もそれを期待していたわけではない。それ

　でも、誕生日パーティーは成功だった。ジェニファーと一緒に座っているデーンの

　表情がそれを物語っていた。彼女の温かい気づかいに、彼はかすかに応えていた。

　私はとても嬉しかった。

　　　　　　　　　　　〇

　いわば、番外編だが、「マクドナルド」が出てきたので、書き留めておく。

　自閉症デーンのおかあさんは、デーンのためのパーティーを開こうと考え、新しいファースト

フードのレストランを見つけた。

　「マクドナルド」の支配人は、「どんな障害児でも歓迎する」と約束してくれたと言う。

　「マクドナルド」は、いろいろと言われているし、あまり良いことは言われていない印象があ

るのだが、こういう理念は、とてもいいのではないだろうか。支配人も素晴らしいが、その背後

には、「マクドナルド」の理念が、明確に存在している。

　日本に、こんな理念のレストランがあるだろうか。

　「マクドナルド」は、「ドナルドハウス」も作っている。病気の子供たちの家族が、病院の近

くで宿泊できるための施設だ。その発想も、とても素晴らしい。僕が聞いたもともとの発想は、

「どうせ、税金でお金をとられるのなら、困っている人のための施設を作ろう」というこ

とだったそうだ。こういう発想は、日本ではあまり見られないのではないだろうか。

　（この項、了）