〜「クレーン現象」の理解〜

　　特に小さかったころは、よく人の手をつかんだものだ。

　「そんなことをするのは、他人をモノのように見ていて、他人の手を『道具』とし

　て使っているからだ」

　　と専門家たちはいう。この説もやはりまちがっていた。

　　ぼくたちの手がうまく連動しないことや、考えていることに従ってくれないこと

　や、どういう助けがほしいかを口では伝えられないことに、専門家はずっと気づい

　てくれなかった。

　　つまり、しゃべれなかったら、手をつかむ以外にどうやって自分が助けを必要と

　していることを人に伝えられるというのか、という話だ。

　　人間といすの区別がつかないんじゃない。

　　　　　　　　　　〇

　「クレーン現象」の理解は、現在どうなっているのか、僕はよく知らない。

　だが少なくとも、「外側から見た自閉症」の理解では、やはり自閉症者は、人間をモノのよう

に見なしている、その現象だと見なしているのではないだろうか。

　イド・ケダーによれば、その理解はまったく違っていることになる。

　ヒトとモノとの区別がつかないんじゃない。

　「クレーン現象」とは、コミュニケーションの方法がわからないことからくる現象なのだ。

　イド・ケダーは、ハッキリと断言していて興味深い。

（この項、了）