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　　もっとすごい方法は、列車にイヌをひき殺させるやりかたです。これは、ちょっ

　とむずかしいのですが、つぎのようにやれば、できないことはありませんでした。

　つまり、列車がやってくる少しまえに、イヌを鉄道線路にさそいこみます。そして、

　高い鉄橋の上を犬に歩かせるのです。鉄橋の上では、どこへもにげる所がありませ

　ん。そこへ列車がやってきて、イヌをまちがいなく、ひき殺すというわけです。

　　母ギツネは、ゆうべ、この方法を使ったのです。わたしが鉄橋の下へいってみる

　と、そこには、猟犬のレインジャーが列車にひかれて、ずたずたになってころがっ

　ていました。

　　母ギツネが、猟犬に仕返しをはじめたのでした。

　　　　　　　　　　○

　人間に、夫のスカーフェイスを殺され、子供四人のうち、三人を殺され、ひとりはつかまえ

られてしまった。

　ここにきて、母ギツネは、「犬を殺す」行為に出る。それまでは、犬に、徒労な追いかけっ

こをさせて疲れさせることしかしていない。そういう意味で見ると、人間の言い方で言うと、

明らかに「復讐」しているように見える。

　でも、この列車にひき殺させる方法は、どうやって習得したのだろう。

　もともと、生まれつき持っている知恵であるとは言いがたい。

　また、「偶然」の行動で、たまたま、犬を殺すことができた、とも考えにくい。よほどうま

いタイミングを考えてやらないとできないのではないだろうか。

　「学習」する以外にはないと思われるが、実際に体験してみるわけにはいかない。

　体験したときには、死んでしまうわけだから。

　どこかで、何かで、「見て学ぶ」ということをしたい違いない。

（この項、つづく）