その時点で、約９０万円の元本が３００万円くらいに増えました。

　　今度はその資金で額面割れして４０円台だったフジタの株を５０００株、同じく

　４０円台だった日本国土開発の株を２０００株買いました。

　　２か月くらい低迷していて、「これはあんまりうまくいかないかなあ。そろそろ

　売っちゃおうか」と思っていたのですが、少し様子を見ていたらある日突然株価が

　急騰し、両銘柄ともに１日で８０円くらいになってしまいました。そこで売却し、

　６００万円くらいになりました。

　　結果的に見ると、あたかも未来が予想できていたかのような買い方・売り方で、

　たった１００万円くらいの元手で、約４か月の間に５００万円ほど儲かってしまい

　ました。

　　それまで株や社債など買ったことはないのに、どうしてあそこでそんなことを始

　めたのか、今でも謎です。

　　後の病気に気づいて治療していた時期に、心の病に関する本をいろいろと読み漁

　ったのですが、その中にミュージシャンの円広志さんの書いた『僕はもう、一生分

　泣いた−−パニック障害からの脱出』という本がありました。その中に、病気にな

　ってから

　「パチンコが神がかり的に強くなった」という記述があります。

　　　店に入り、パチンコの台のレーンを見る。

　　　すると、出る台が浮き上かって見えるのだ。その台に陣取ると必ず出る。スタッ

　　フと出かけて、浮き上がって見える台を探す。

　　　「お前はあの台。君はこの台」

　　　それが全部出るのだ。（『僕はもう、一生分泣いた』１１９ページ）

　　これとちょっと似た現象なのでしょうか。病気のせいで、まともなやり方で生活

　費を稼ぐことが難しくなると特殊な能力が現れるのかもしれません。

　　ただし、自分の場合、神がかり的にうまくいったのはこの１回だけで、その後も

　株式投資は続けていたのですが、うまくいきませんでした。

　　発症し始めた時期だけ特殊な能力が現れたのか、単なる偶然の一致なのか。そこ

　は、もちろん正確にはわかりません。でも、それまで株や社債なんて買ったことが

　なかったのに、どういうわけか突然買おうと思い、しかもうまくいったのですから、

　やはり不思議なことだと思います。

　　　　　　　　　　　〇

　筒美遼次郎は、強迫性障害が発症し始めたとき、株や社債を買い始め、４か月で５００万円

くらい儲かったのだと言う。何故、突然はじめたのかはわからない。

　また、円広志は、パニック障害になってから、パチンコで出る台が、浮き上がって見えてき

たと言う。

　こういう現象が本当にありえるのかどうかは、確認のしようがないから、わからないと言う

ほかはないだろうが、不思議なことなので、書き留めておくことにする。

　精神的な病気は、やはりどこかで、感性を鋭敏にする要素があるのかもしれない。だから、

ありえない現象とまでは言えないのではないだろうか。

（この項、了）