「内臓感覚」ノート


201・「授乳の役割」

  授乳には、心と体の栄養のほか、もう一つ大きな役割があるんです。それは、赤

 ちゃんの中の「性の遺伝子」に働きかけるということ。赤ちゃんとお母さんは、授

 乳のたびにセックスしているようなもんやと、私は思います。だから授乳期のお母

 さんは、だんなさんとのセックスに消極的なんです。一日に何度もセックスしてい

 るんですから、男性が寄ってくるとうとましいの(笑)。男性は、思春期になると、

 衝動的にセックスしたくなる時期があります。そういう時期は、「人を殺してでも

 セックスをしたい」と思うもんです。けれど赤ちゃんのころ、しっかり抱きしめて

 もらって、授乳で満たされた経験をしている子には、歯止めがききます。そういう

 子は、人も大切にし、自分も大切にして、楽しい青春時代を送ることができるので

 はないでしょうか。そのためにも、赤ちゃんを母乳で育てて欲しい。できれば一年。

 そこまで踏ん張れなければ、せめて三カ月は、何とか母乳で育てて欲しいものです。

(『大丈夫やで』 坂本フジヱ)

         ○

 授乳とは、赤ちゃんの心と体の栄養のためであるが、もうひとつ、母親にとっては、授乳は

乳児とのセックス(性的体験)のようなものだ。

 そういうことは、ありえるのではないだろうか。

 僕が知る限りでは、吉本隆明も、同じ意味のことを言っていた。

 坂本フジヱさんは、自分の出産の体験や、長年の助産師の経験から、この叡智に至ったに違

いない。

 なかなか、すごいことを、サラリと言う人だ。

 (この項、了)

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