シートンはイギリスの北東部にある港町サウスシールズで、一八六〇年八月十四

　日に生まれました。父親は商船会社の社長で、シートンは十人目の男の子でした。

　九人の兄は特に動物好きではなかったそうですが、シートンは、赤ん坊の時から動

　物が好きで、泣いた時に母親がヒヨコや窓に止まったハエを指し示すと、それを見

　て泣きやんだそうです。

　　シートンだけがどうして動物好きだったのでしょうか。これについてはシートン

　が生まれる前の母親の生活に手掛かりがあるようです。母親はシートンを身ごもっ

　た時、ちょうど出版されたばかりの『アーネスト・マルトラバース』という題の本

　をとても熱心に読んだそうです。この本は博物学着で猟師でもあった人の伝記です

　が、母親の祖先には村人たちをオオカミの書から救ったエバン・キャメロンという

　勇ましいオオカミ猟師がいました。シートンの母親は、自分の子供がその博物学者

　や猟師エバンのような人になってほしいと強く願い、毎日、聖書を読んで長い祈り

　を捧げていたそうです。

　　　　　　　　　○

　シートンは、十人目の子どもであり、上の九人の兄は、特に動物好きではなかったと言う。

　どうしてシートンだけが動物好きだったのか。

　藤原英司が示している根拠は、とても興味深い。

　母親が、シートンがお腹にいる時に、猟師や博物学者の本を読み、自分の子どもにそういう

人になってほしいと強く願っていたと言う。

　この根拠は、大変に興味深いし、十分にありえることだと、僕には思われる。

　（この項、了）