219・ボブと箱




　　気泡緩衝材、いわゆる“プチプチ”を見つけると。ボブはずっとそれにかかりきり

　になる。どんな子どもでも気泡がプチッと弾けるのをおもしろがるだろう。ボブもプ

　チプチで遊ぶと大興奮する。その姿を眺めているのは本当に楽しい。前足や口で気泡

　をつぶすたび、ボブは振り向いて「いまの、聞いた？」と言うようにぼくを見る。

　　包装紙もお気に入りのアイテムだ。ボブヘのプレゼントの包みを開けると、ボブは

　いつでも中身よりもかわいらしい柄の包装紙を遊び道具に選ぶ。こすれるとカサカサ

　と音を立てるセロファンにも夢中だ。たとえば、シリアルの内袋とか、スーパーマー

　ケットでパンを包んでくれる袋とか。見るたびにいつも驚くのだが、ボブはセロファ

　ンにじゃれついてカサカサいわせ、平気で三十分は遊んでいる。アルミホイルをしわ

　くちゃに丸めたものを見つけると、それでまた同じように遊ぶ。

　　だが、間違いなく、ボブがいちばん好きなのは、箱だ。基本的に、見つけた箱はす

　べて自分のおもちゃで、自分を楽しませるために用意されたものだと思っている。ぼ

　くが箱を持ってボブのそばを歩くと、ボブは突進してきてそれにつかみかかる。シリ

　アルの箱でも牛乳のパックでも大きなダンボール箱でもおかまいなく、前足をばたつ

　かせて飛びかかる。「ボクにくれよ。いますぐ遊びたいんだよ」と言っているみたい

　に。

　　ボブは大きめの箱のなかに隠れるのも好きで、一度ならずぼくをはらはら、そわそ

　わさせた。…

（『ボブがくれた世界』　ジェームズ・ボーエン）


　　　　　　　　　　〇

　犬や猫の行動を見ていると、自閉っ子の行動とよく似ている、と感じることが、度々ある。

　我が家には、犬がいる（猫は昨年亡くなってしまった）が、散歩に連れて行く時は、しょっち

ゅう、僕が知っている自閉ちゃんと、「ああ、そっくりだな」と思っている。

　もちろん、自閉っ子が、動物並みだと言いたいのではない。

　人間も、動物だと言いたいわけだ。

　＜動物・自閉症・人間＞は、スペクトラム（連続性）だ。

　動物という総体から見ると、犬や猫の方が、遥かに優しく、＜人間的＞だ。

　人間の方が、遥かに＜非人間的＞だ。

　ボブの行動は、犬や猫を飼っていると、とてもわかりやすいし、僕の場合、学校で自閉っ子も

見ているから、動物と自閉っ子がよく似ているのが、よくわかる。

　テンプル・グランディンは、＜自閉症は、動物と人間の中間にある駅のようなものだ＞と

言っている。

　ボブのように、自閉っ子は、キラキラしたものが好きだし、それに過剰に執着する。

　箱も好きだし、大きな段ボール箱の中に入るのも大好きだ。

　ボブのおかげで、昨年、突然亡くなった猫を思い出して、切なくなった。

（この項、了）