ることがよくある。挨や虫が飛んでいるのを見ているのかと思って視線の先を見て も、何もない。猫の目には、人間が見えないものが映るのだ。 猫が草むらで何かをじっと見つめているときがある。こんなとき、猫はその場の エネルギーの流れを感じているに違いない。もちろん、猫の視線の先には何もなく、 風にそよぐ草の穂を飽きずに眺めているとは思えない。こういうとき、動くものに 敏感に反応する猫の目が、人間でも見えるものばかりを追っているとは限らない。 猫の視線を追って、猫の気持ちになれば、不思議なものが見えてくるかもしれない。 ○ 猫の目に、何が写っているのか。猫は、実際には、何を見ているのか。本当のところは、わ からないと言う他はない。 だが、類推することはできそうな気がする。 何故なら、自閉症の子たちの振る舞いに、＜共通性＞（連続性）があるように見えるから だ。 自閉症の子たちの振る舞いを見ていると、猫と同じように、空中をうっとりと見つめている 姿に出会うことがあるのだ。何かを見ているのは確実だが、ハッキリと何かはわからない。 空中に漂う埃を見ているようにも見える。 たかが埃、と思うだろうが、実際には、見え方が違っている。 自閉症者は、「過剰特異性の視覚」で、微細なものに焦点が合う視覚をしているために、小 さな虫や目に見えないほどの埃が舞う姿が、とても鮮明に見えている可能性がある。 同じ風景を見ていても、僕たちとは見えているものが、確実に違うのだ。 自閉症者も、猫も、美しく鮮明な自然に、心を奪われているのかもしれない。 猫の視覚と、自閉症者の視覚には、＜共通性＞（連続性）があると、僕には感じられ るのだ。 （この項、了） |