オーテクはこのうえない助けになることがわかった。彼は、本に書かれているよ

　うな、われわれの社会に受け入れられているオオカミに関する誤った考えをまった

　くもっていなかった。事実彼はオオカミと親しい間柄で、本当の親族と見なしてい

　た。後に私が彼らの言葉をいくらか習い、私に対する彼の評価が向上したとき、彼

　はこんな話をしてくれた。彼が五歳の頃、名のあるシャーマンだった父親の手でオ

　オカミの巣穴に連れて行かれ、二十四時間そこにおき去りにされたことがあった。

　その時彼は、オオカミの子どもたちと仲良しになり、まったく対等の立場で一緒に

　遊んだ。おとなのオオカミに匂いを嗅がれたことはあったけれど、それ以外痛めつ

　けられることもなかったそうだ。

　　オオカミについて彼がしてくれた話には、ほかにどんな証拠もない。それを全部

　鵜呑みにしたら、非科学的であるという誹りは免れないだろう。しかし、何らかの

　証拠が手に入ったときには常に、彼の話が正しいことが判明した。

　　　　　　　　　　○

　オーテクは、イヌイットのシャーマン。自分のトーテムは、オオカミだと思っており、オオ

カミの会話も理解できると言っているくらいの人だ。

　五歳の頃、父親にオオカミの巣に連れて行かれて、二十四時間置き去りにされた。

　その際、オオカミの子どもと仲良くなり、一緒に遊んだ。おとなのオオカミには、匂いを嗅

がれただけで、他には何もされなかったと言う。

　かつてインターネットで見たとき、いわゆる「オオカミ少年」は、存在しなかったという人

たちが結構いた。オオカミが、人間の子を育てるはずがない。人間の子どもを育てるよりも、

食べてしまうはずだ、というわけだ。

　だが、オーテクの例はどうか。（※真実であると仮定して、だが）

　こういう例を見ると、「オオカミ少年」は絶対にありえないとは言えないように思える。

　（この項、了）