「いつごろから動物と話すことができたのですか」

　　こんな質問をよく受けます。

　　にわかには信じてもらえないかもしれませんが、誰でも皆、人が人と会話するの

　と同じように、動物とも��話をしている�≠ﾌだと、少女時代の私は、そう思ってい

　ました。

　　動物と話ができることが、自分だけに与えられている特殊な能力であり、他の人

　々は動物の気持ちを理解することができないのだとは知りませんでした。

　　物心がついたころから、動物が空腹を覚えていることや、寒かったりすることな

　どを、漠然とでしたが、私は感じ取れていました。

　　実際、飼っていた犬たちがお腹を空かせているのを心の中で感じ、家族が工サを

　あげ忘れていないか確認しに行ったりしました。また、猫が外で震えている感じが

　したので、外に出てみると、身体が濡れて弱っている猫を見つけたりもしました。

　　そうしたことは、あまりにも自然なことだったので、

　「ねえ、あなたも動物の気持ちがわかる？」

　　などと、家族や友人にわざわざ尋ねることもありませんでした。

　　今でもよく覚えているのは、私が９歳くらいのとき。

　　私の故郷である北カリフォルニア・ブッテ郡グリドリーという小さな町で、両親、

　姉と兄２人の６人家族で暮らしていましたが、その家で飼っていたタンジーという

　美しい三毛猫が、今まさに子猫を産むところでした。タンジーがお産に入ると、彼

　女が頑張っている気持ちが強烈に私に伝わってきたのです。まるで私がタンジーに

　なってしまったかのように−−。腹部に引きつるような痛みを感じ、私は突然緊張

　し、不安な気持ちに襲われました。でも同時に、これは避けられないことで耐えな

　ければ、という、ある種の観念したような気持ちも感じました。

　　ただ現実には、私は、とにかく夢中で「頑張れ！　もうすぐよ！」とタンジーを

　励まし続けていましたから、そのときは自分に現れた不思議な感覚のことなどは二

　の次でした。でも後になって、彼女とは気持ちがわかり合えていただけではなく、

　もっと深いところでつながっていたことに気づきました。

　　　　　　　　　　○

　ハイジは、大変興味深い人だ。物心ついた頃から、動物の気持ちを感じ取ることができてい

たと言う。

　まるで、その動物になったかのように、内側から気持ちを感じることができるのだ。

　こんなことは、非科学的だということになるのだろうが、僕個人としては、ありえないこと

はではないと思っている。

　実際に、動物の気持ちと「同化」するのは、どんな気持ちなのか、よくわからないと言う他

はないが、ハイジの記述を読む限りでは、内臓感覚を基にしたつながりであるように見える。

　動物と人間の心は、連続性と言える面があり、そこに橋をかけることができるハイジのよう

な存在もありえるのではないだろうか。

　（この項、了）