河合 そうですね。だからわたしは、自分たちの方法を保持しつつ欧米に負けな
い人間になるというのが理想なんです。負けないということと、彼らと同じにな
ることとは、わたしは絶対違うと思うんです。自分のものを保持しつつ負けない
ということができると思うんです。
〇
河合 何と妥協し何を犠牲にするかということは全体としてまとめているのであ
って、論理的に整合しているということではないはずです。しかし日本人は残念
ながら従来持っているものをずいぶんなくしつつあります。わたしはそれを失う
ことなく持ち続けながら、一方で欧米との競争には負けるまいと思っているので
す。そして、それはできると思いますよ。
（『心理療法対話』）
〇
なるほど。
言われてみれば、確かに僕も河合隼雄と同じことを考えている気がする。
世界は、欧米の思想と文明に席捲された。
だが、それでも「負けない」ことができるはずだと、河合隼雄は言う。
欧米に同化するのではなく、日本らしさも保持しつつ、欧米に負けないこと
は、可能ではないのか？と。
僕自身は、その問題について、
養護学校の生徒たちや、自閉症のこたちとの交流の中から、彼らの＜内面＞の世界の
深さは、＜欧米＞以前に根拠のある世界なのだと考えてきた。
それは、＜欧米＞が失ってしまったものであり、＜欧米＞に淘汰される運命だとは思
えない。
自閉症の段階は、人類が、動物段階から離脱するときに、とらざるをえなかった＜身
体＞表現の名残なのだと思う。
決して、「障害」で片づけられるべきものではないと考える。
そうではないでしょうか、河合さん？！