神田橋　ボクが教えている心理士の人で、リハビリをやっている人、脳梗塞から一時

　　　間以内にリハビリを開始したほうがいいって言ってるよ。

　　　　その人は、自分のお母さんの意識がないのに手足を動かしたりしてあげて、意

　　　識が回復したら完全になんにも後遺症が残らなかった。八十いくつか。一分でも

　　　早く、リハビリを開始したほうがいいとその人は主張しているよ。

　　　　やってみて、と言っても急性期は危険だという思想を吹き込まれているからし

　　　ないよね。その人は、意識が回復する前からやったの。手を握るように動かした

　　　り、手をね、こうしてこう曲げたりね。自分のお母さんに付き添っているからさ。

　　　で、意識が回復したら、なんにも後遺症がなかったの。病院の先生は奇跡だって。

　　　ＣＴを撮ったら、ちゃんと脳梗塞なのに。

　　　　だから一所懸命、生体が抗うんだろうな。失われていくときにせめぎ合いの時

　　　期があるんだろうと思うね。急性期の最初からリハビリをやるというのは、自分

　　　のお母さんではじめて試したんだ。

　　　　　　　　　　　〇

　脳には、可塑性があると言われている。

　その人は、母親が脳梗塞を起こして、すでに意識のないうちから、リハビリを始めたと言う。

　そしたら、意識が回復したら、後遺症が何もなかった。

　しかも、それが八十歳のお母さんだとは！

　意識を失うほどの脳梗塞だったら、普通は確実に後遺症が残るだろう。

　脳には、可塑性があると言われている（ノーマン・ドイジ）。

　ほぼそう考えていいのではないだろうか。

　（この項、了）