われわれがすることはなんだって、 輪を描いていることに気がついただろう。 世界の力はいつだって、輪をなして働いている。 何もかもが、巡り巡ろうとしているんだ。…… 世界の力がなすことは、みんな輪を描く。 ほら、空は円い形をしているだろう。…… 星はどれも円いと聞いている。 風だっていちばん勢いのあるときは、渦を巻いて吹くんだ。 鳥たちも円い巣をつくる。鳥もわれわれと同じく、 大いなるものに身をゆだねているからな。 太陽だって弧を描きながら、昇っては沈んでいく。 月もそうだ。太陽も月も、その姿は円い。 季節−−これも大きな輪をなして移り、 もとのところへ戻っていくんだ。 人の命も輪を描いている。 子供の時代からまた次の子供の時代へと。 輪は、世界の力が働くものすべての内にめぐっているんだよ。 ブラック・エルク（オガララ・ラコタ族）1930年 ○ 世界はいつも円をなしている。自然も、鳥も、人間も、季節も、円環をなしている。 季節がめぐるように、人の命も輪を描きながら、子供の時代からまた次の子供の時代へと移 ってゆくと考えられている。このインディアンの言葉に出てくる＜円環の思想＞は、中島みゆ きの「時代」とそっくりだ。 ○ そんな時代もあったねと いつか話せる日が来るわ あんな時代もあったねと きっと笑って話せるわ だから今日はくよくよしないで 今日の風に吹かれましょう まわる まわるよ 時代はまわる 喜び悲しみ繰り返し 今日は別れた恋人たちも 生まれ変わって めぐりあうよ 旅を続ける人々は いつか故郷に出会う日を たとえ今夜は倒れても きっと信じてドアを出る たとえ今日は果てしもなく 冷たい雨が降っていても めぐる めぐるよ 時代はめぐる 別れと出会いを繰り返し 今日は倒れた旅人たちも 生まれ変わって 歩き出すよ ○ 自然の季節が移り変わるように、人の命もつながっていく。 中島みゆきの心性の中には、とても遠い時代の人間の心性が息づいていると言えるのではな いだろうか。中島みゆき、その心性を、現代の歌に乗せて、＜再現＞することができる稀有な 才能の人だ。 （この項、了） |