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　　植物はひとの兄弟姉妹。

　　耳を傾ければ、

　　語りかける声を

　　聞くことができる。

　　　　　　　　　　　　　　　　アラバホ族の格言

　　　　　　　　　○

　＜ワカン・タンカ−−偉大な精霊＞から大いなる普遍的な生命力が万物に−−大草

　原の花々や、吹く風、岩石、樹木、鳥、獣たちに流れ込み、その同じ力が最初の人

　にも息吹きを与えた。こうして万物は親戚となり、同じ＜偉大な神秘＞によって一

　つになった。

　　地上、大空、水中の生き物たちとの親族関係は実体と手応えがある原理だった。

　鳥や獣たちの世界にも兄弟の情愛が見いだされ、だからラコタ族は彼らの中に入っ

　ていっても安全だった。ラコタ族の中には羽毛や毛皮をまとった友人たちにあまり

　にも深い親しみを感じるようになり、真実の友愛を込めて彼らに共通の言葉で話し

　かける者たちもいた。

　　動物たちには権利があった−−人間の保護を受ける権利、生きる権利、繁殖する

　権利、自由の権利、人間の負債に対する権利が−−そしてこれらの権利を認めるラ

　コタ族はけっして動物を奴隷にしようとはせず、食糧や衣服に必要とされないあら

　ゆる生き物たちを見逃した。

　　このような人間味溢れる生命観や相互関係の概念をもっていたために、ラコタ族

　は周囲の世界にいつも変わらぬ愛情を抱いていた。それは彼の存在を生きる歓びや

　生命の神秘で満たした。それは彼に生きとし生けるものへの崇敬の念を抱かせた。

　この広大な存在世界では、あらゆるものにそれぞれに価値がある平等な場所が与え

　られていた。…
　　　　　　　　　　　ルーサー・スタンデイング・ベア首長　オグララ・スー族

　　　　　　　　　　○

　インディアンにとっては、「兄弟姉妹」という概念は、「人間」のつながりの枠を超えて拡

張されている。

　人間は、この世界の中で、特別な存在ではないと、徹底して認識されている。

　自然の草も、花々も、風も、岩も、木々、鳥も獣も、人間も、インディアンにとっては、

「偉大なる精霊(ハイゴッド)」によって、作られた、兄弟姉妹なのだ。岩も、植物も、動物

も、人間とは「形」や使う言葉は、違うけれども、同じ兄弟姉妹なのだと思っていたら、確か

に、自然や動物、植物を大切にしたことだろう。

　日本では、どうだろう。

　古代の神話を読んでみても、すでにその段階で、人間と岩や植物が、兄弟姉妹だという思想

は、ハッキリとした形では、見られなくなっているのではないだろうか。

　むしろ、宮沢賢治のような資質の人の方が、こういうインディアンの世界観は、馴染みやす

いものだったように思われる。宮沢賢治の童話の世界では、岩の側からの世界を語ったり、

植物の側から世界を語ったり、動物の側から世界を語ったりすることが、自在にできるように

なっている。

　（この項、了）